スノウ・ファントム
前に山野にひやかされたとき、顔も名前も知らない子を好きになるわけがないと切り捨てた俺だけど、それ以来どうも彼女のことが気になっている。
とはいえ、いつも後ろからじっと見つめるだけで、いまだに名前も知らないし、顔も一瞬の横顔くらいしか見たことがない。
同じ教室内にいるのだから、正面から見るチャンスもあるのだろうけど、そのチャンスが迫ると俺のほうから目線をそらしてしまう。
照れくさくて、どんな顔をしたらいいのかわからないのだ。
「今日さ、模試あるじゃん。後ろからちょこっと、名前のぞけないかな」
「……お前は、そのルックスでどうしてそんなヘタレなんだよ。後ろで怪しい動きしてたらカンニング疑われるのがオチだぞ。名前くらいバシッと聞けよ」
「そっか……」
(けっこう名案だと思ったんだけど……)