スノウ・ファントム
* * *
キナコが学校を終える時間を見計らい、校門で待ち伏せていた俺は、今日も彼女と一緒に帰ることに成功した。
その道すがら、靴底がさくさくと雪を踏みしめる音を楽しみながら、俺はまたひとつ叶えたい願いを心に描きつつ、キナコをちらりと見る。
手をつなぐのも、一緒に帰るのも、ルカになってから次々に叶えた。
相合傘だってしたし、『透視なんてできないから――』と、生前の俺には言えなかった軽い冗談だって、少しは得意になった。
(だったら、次は……)
「キナコ、もうすぐバレンタインだね」
「え? うん……そう、だね」
「誰かにあげないの?」
「私は、別に……」
「そうなの? 俺には?」
あからさまな催促は嫌がられるだろうか。
でも、こっちからどんどん押していかないと、内気なキナコからチョコをもらうなんて無理な気がした。
「……ほしいの?」
「うん。あのさ、ハート形で、苺のチョコのやつがいい」
キナコはしばらく難しい顔をして考え込んでいて、俺は卑怯にもその心の中の声に耳を傾けた。
(別に、あげてもいいんだけど……ルカが無邪気に喜んでくれる姿が簡単に想像できて、なんか罪悪感が湧きそうじゃない? だったら、変に期待させない方が……)
相変わらず、あれこれ先回りして考えすぎているキナコの思考に少し呆れながら、当然ショックも受けた。
(変に期待させない方が……か)