スノウ・ファントム
(だから……消えないで、ルカ)
小さな手のぬくもりと同時に伝わってきたキナコの思いは、同情なのか愛情なのか、俺にはハッキリとわからないけど。
(やっぱり、どうしても俺……キナコを諦められない)
自己満足でも構わない。この手をずっと握っているのは、俺でありたい。
「キナコ」
俺は穏やかな声で、彼女の名を呼んだ。
そして彼女が小首をかしげたのを見計らってゆっくり身を屈めると、小さな桜色の唇に自分のそれを重ねた。
ぴく、とキナコの肩が跳ねて、その体全体が硬直する。
もちろん俺だって緊張していて、押し当てた唇は徐々に熱を帯び、心臓は飛び出しそうなくらいに暴れた。
(……好きだよ、キナコ)
今この瞬間、キナコにも俺の気持ちが聴こえてしまえばいいのにと思った。
でなければ、この胸を切り開いて、心を取り出して見せてやりたい。
きみへの想いは、大切な宝物のように、きっときらきら輝いているから――。