スノウ・ファントム
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そう思いつつも、なかなか行動に移せない日々が続き、味気ない数字だけが並ぶ教室のカレンダーは二月に変わった。
雪の降る日の多かった先月に比べてあたたかい陽気が続いていて、最初の一週間は雪どころか雨も降らず、当然ルカにも会えなかった。
(まさか、このまま春になってしまわないよね。ルカにリクエストされているチョコの作り方とか、可愛いラッピングとか、今必死で調べてるから……バレンタイン当日でなくても、会って渡したいのに)
葉村くんのことを気に掛ける一方で、ルカのことを思わない日もなかった。
“二人に対して抱く思いは別の種類のもの”
つい最近までそう思っていたけれど、ルカに会えない日が続いている現在の少し浮かない気持ちは、葉村くんを思って憂鬱に過ごした去年の夏休みに抱いたものとよく似ていた。
(まさか……そんなわけ、ないよね)
自然とある予感が頭に浮かんだけど、すぐにかき消した。
だって……ルカは、普通の男の子ではないのだ。私のこの気持ちは、やっぱり同情に決まっている。
何より、私が好きなのは、葉村くんのはずでしょう?
日常のふとした瞬間、自分にそう言い聞かせることが増えていたある日のこと。
私はクラス担任に頼まれて、昼休みに新品のチョークを取りに校舎の隅の教材室という場所を訪れた。
職員室で借りた鍵を使って中に入ると、教室の半分ほどの広さに所狭しと並ぶのは、様々な学校用品。
そのなかからチョークの箱を見つけて出ていこうとすると、外から急に扉が開いた。