スノウ・ファントム
◆無念
「……雪、ぜんっぜん降らないなぁ」
「仕方ないだろう。少しの辛抱だ」
「……くそ。このタイミングでキナコが葉村理久と話しちゃうなんて」
スノウツリーの根元で、俺はキョウさんと下界を見下ろしながら、悔しさに歯噛みしていた。
このところ雪が降らず、一週間もキナコに会いに行けない日が続いていて、ただでさえやきもきしていたところに、予想外の閉じ込め事件で二人が接近してしまった。
「……でも、彼女はときどき空を見てお前のことを考えている。脈は充分あるだろう」
キョウさんは冷静にそう分析して、俺を励ましてくれる。
「そう……だといいんですけど」
「少しでも可能性があるんだ。早く例の作戦を決行して、彼女の心を強引に手に入れてしまえばいい」
「……作戦」
そうだ……俺は、その作戦をなんとしてでも成功させなければいけないんだ。
うまくいけば、一度は死んだ俺が、誰にも怪しまれることなくずっと下界にいられる。
ただ……それには、大きな犠牲も必要なのだけれど。
「まだ悩んでいるのか? ……でも俺のようになりたくなければ、心を鬼にするしかない」
「キョウさんのように……」