スノウ・ファントム


(ほ、本当に……?)


私は驚くのと同時に、顔がかぁっと熱くなっていくのを感じた。

心を読まれるのって、すごく恥ずかしい。

たとえるなら、着替えを覗かれているような……他人には絶対見せたくないプライベートな部分を、暴かれているような感じ。

ルカといることを急に気まずく感じて、私は黙り込んでしまう。

駅には列車到着の放送が流れて、遠くからガタゴトと線路が鳴る音が聞こえてくる。

そして電車がホームに止まると、ルカは私の手を優しく取って、飴を握らせながら軽い調子で言った。


「キナコ、ゴメン。……でも俺、心の中は見えるけど透視はできないから、そういうエロい心配はしなくて大丈――」

「そ、そういうことじゃないっ! ルカのばか!」


手の中にあった飴をルカに投げつけて、私は彼のもとを駆け出す。


(ついてこないで……!)


心の中が読める彼に聞かせるように、わざと強くそう思いながら、さっきいた場所からは遠く離れたドアから電車に乗り込んだ。

走ったせいで乱れる呼吸を整え、プシュー、と音を立てて閉まったドアに背中を預ける。


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