スノウ・ファントム
私に具体的な方法を教えてくれないのは、後ろめたいことがあるから?
そう思うと、山野くんの予想も有力な気がする。
ルカのいる、“裏側の世界”か……。いったいどんな場所なんだろう。
「やべ、もうこんな時間だ。補導される前に帰らないと」
時計を見てガタンと立ち上がった山野くん。
私はまだまだ話していたかったけれど、仕方なく彼にならって席を立ち、一緒に店を出る。
「……俺でゴメンだけど、いちおう送ってくわ。持田……じゃなくてルカが何考えてんのか、ちょっとこえぇし」
「うん……ありがとう」
冬の星座が瞬く夜空の下で、たくさんの人に踏まれて汚れた雪を避けながら、先を歩く山野くんの背中を追う。
(まさか、ルカがそんなことするわけない……とは思うけど)
こんなとき、本人が私や山野くんの疑問に答えてくれれば一番いいのに、やっぱり今夜はルカが現れる気配はない。
(今、どこにいるの……? 葉村くんの近く? それとも、“裏側の世界”……?)
たとえばルカが私をそっちに引き込もうとしていたとして、私自身はどうしたいんだろう。
ルカと一緒にいたい。そのことだけ考えれば、むしろ幸せ?
「……これだけは言っておくけどさ」
私が思いを巡らせていると、突然足を止めて振り向いた山野くん。
彼は白い息を吐き出しながら、神妙な顔をしている。