スノウ・ファントム
そうやって待つこと、十数分。
いつまで経っても葉村が姿を現すことはなく、俺はおかしいと思い始めた。
そのとき、急に屋上のドアが開いたため、俺は物陰に潜んでちらりと様子を窺った。
(ここ、生徒は立ち入り禁止なはずだけど……)
そう思いながら見つめる先ではこの学校の女子と男子がなにやら照れくさそうに向き合っていて、女子のほうが可愛いラッピングを男子に差し出した。
(ああ……なるほど。今日は、バレンタインだもんな……)
その光景をほほえましいと思う反面、自分も早くキナコにチョコをもらいたいのに、と段々苛立ってきた。
雪だっていつ溶けてしまうかわからないのに、葉村はいったい何をモタモタしているんだろう。
しびれを切らした俺は、幸せそうなカップルが屋上を去った頃に、校舎に入った。
今日のために調達した北高の制服に身を包んでいれば、校舎内をうろうろしていても怪しまれることはないだろう。
階段を下りていき二階に着くと、葉村の気配を探りながら二年の教室が並ぶ廊下をゆっくり歩く。