スノウ・ファントム
◇真意
バレンタインの日の朝、目覚めてすぐにドキドキしながら窓の外を見ると、一昨日積もった雪はまだ少し残っていて、朝陽をきらきらと反射していた。
(よかった……)
昨夜のうちに用意していたチョコを手にして家を出ると、窓から覗いたよりもずっと辺りが明るくそしてあたたかかった。
このままだと、午後には雪、溶けちゃう……?
不安になった私は辺りをキョロキョロ見回して、小さく呼びかけてみる。
「ルカ……いま、近くにいない?」
しばらく待ったけれど返事も気配もなく、私は仕方なくひとりで駅に向かった。
駅に着くと、二階にある改札を通ってホームへ続く階段を下りる。
すると、ホームの端の方へと歩いていく葉村くんの背中を見つけた。
今日の彼はなんだか背筋がぴんと伸びていて、いつもより元気そうに見える。
(話しかけて……みようかな)
教材室で彼と閉じ込められてしまったとき、本当はもっといろいろ話がしたかった。
葉村くんの抱える“事情”……やっぱり、ルカを頼るんじゃなくて、自分で聞いてみよう。