スノウ・ファントム
(さっき、駅で……私が見つけていなかったら、どうなってたんだろう)
ぞく、と寒気が走り、嫌な汗が背中を伝った。
いやでも湧き上がる縁起でもない想像をかき消すように首を振ったけれど、ほとんど無意味だった。
私はそれから学校に着くまでの間も、授業中も。
葉村くんのことが心配で、胸騒ぎが消えなかった。
*
「じゃあねー、菜子もファイトだよ!」
「うん。また明日」
放課後、彼氏の中山くんにチョコを渡したばかりでちょっとテンションの高い早苗を見送ったあと、私はルカに贈るためのチョコの袋を机の上に出した。
(今日……会えるよね?)
教室の中ほどにある自分の席。
そこから窓の外を眺めると、校庭の端の方しか見えないけれど、溶けかけの雪がまだうっすらと残っているのがわかる。
学校よりは、外にいた方がいいのかな……。今さらだけど、待ち合わせ場所とかちゃんと決めておけばよかった。
頬杖をついて、ふうと息をつく。
そして、窓の方から視線を移動させて、廊下側の葉村くんの席をちらりと見やった。
帰り支度を終えた彼は、バッグを肩から下げて教室を出ていくところ。
(……今の葉村くんのこと、ひとりにして大丈夫かな)
行きと同じく、帰りも電車を使う。駅のホームで、朝みたいなことする可能性がないとも限らない。
追いかけて声を掛けようかどうしようか迷って、彼の背中をじっと見つめていたとき。
私は、自分を取り巻く周囲の異変に初めて気が付いた。
同じクラスの男子が四人、私の机を囲むようにして立っている。
その圧迫感と、彼らの浮かべるにやりと気持ちの悪い笑みに、身体が強張る。