花舞う街のリトル・クラウン
オリバーはその手を取るとにこやかに微笑んだ。その笑顔はどこにでもいる普通のおじいさんのそれに違いなかった。


「またご入り用のときはいつでも尋ねておくれ」

「ええ、必ず」


それからシャルトル公はそそくさとその場を後にした。

リルはその様子を目を驚きのあまり見開いて見つめていた。

オリバーはあの若い男性のことをシャルトル公と呼んだ。公、とつけて呼んだのだ。

公と敬称をつけて呼ぶのは、相手が貴族であるという証。つまりはシャルトル公は紛れのない貴族なのだ。

貴族が一般市民であるはずのオリバーに敬語を使い、わざわざ声をかけた。

オリバーには何の爵位もなく、立場的には格下となる。それにも関わらず、貴族と同等、否それ以上の立場の人物に対するような態度をとった。

このオリバー・ラビガータという人物は一体何者だろうか。


「なんじゃ、そんなに見つめて」


リルの視線に気づいたらしいポリバーは眉間にしわをよせて「変な娘じゃのう」とリルを見つめた。

慌てて首を横に振ったリルは「届けに行かなくちゃいけませんね」とオリバーに声をかける。


「おお、そうじゃったのう」


オリバーもその言葉に頷いた。

もうすぐリコリス王女の生誕祭が開幕してしまうのだ。

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