花舞う街のリトル・クラウン
「知りません、そんなこと。誰にどう言われようと、私には関係のないことですから」

リルは言い切った。

リルにとってフルリエルで働くと言うことは大きな意味はなかった。

仕事を任されている以上、仕事には真剣に打ち込むが、リルにとってそれが全てではない。

一番に成し遂げたいことは、あのペンダントの持ち主を探すことだからだ。


「へえ、君変わっているね」


彼は薄く笑いながらリルの髪を一束持ち上げる。


「兄上が興味を持つだけのことはありそうだ」


「兄上?」


誰だ、それは。リルは怪訝そうに問いかけるが、彼は何も答えようとはしない。

先ほどまでの人のよさそうな無垢な笑顔ではなく、どことなく裏のありそうな黒い笑顔を浮かべてリルに顔を近づける。

咄嗟に逃げようとリルは距離を取るが、それを邪魔するように彼はリルの腰に腕を回した。


「え、ちょっと!」


「その容姿、ただの一般市民ってだけじゃ勿体ないね」


徐々に彼の顔が近づいてくる。

胸板を押し返そうにも、大の男である彼には敵いそうにない。

もうだめだ、と思って目を閉じたその時だった。



「おい、何をやっている」



聞き覚えのある声が聞こえてきた。

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