花舞う街のリトル・クラウン
「きちんと名乗らねばならないときが来たな」
シオンはリルの方に向き直ると名乗った。
「シオン・ルナルス・パルテナ。それが俺の名だ」
それは第一王子の名。
王都から遠く離れた場所で暮らしていたリルでさえも聞いたことがある名前だ。
リルはあまりの出来事に脳がうまく働かなかった。目を見開いたまま言葉を失ってしまったのだ。
それを見たシオンは後ろ髪を掻きながら「本当は名乗りたくはなかったんだがな」と独り言ちる。
「ご、ごめんなさい、私は気づかずに、なんて無礼な態度を…」
しどろもどろになりながらそんなことを言うリルに、シオンは「それは違う」と否定し、その頬に手を添えた。
「俺が名乗らなかっただけだ。お前に本当の自分を知られたくなかったから」
自嘲するような、どこか寂しいシオンの笑顔に、リルは自分がなんてことを言ってしまったのかと後悔した。
シオンはきっと、自分の名前を名乗りたくなかった。名乗ってしまえば、こうやって身分を抜きにシオンに対して行動できなくなるからと。
急に距離を置かれてしまうことほど寂しいこともないだろう。
リルは自分の拳を握った。
「シオン」
その声でシオンははっとリルの方を見る。
決意に満ちたその強いロゼの瞳に、シオンは目を見開いた。
シオンはリルの方に向き直ると名乗った。
「シオン・ルナルス・パルテナ。それが俺の名だ」
それは第一王子の名。
王都から遠く離れた場所で暮らしていたリルでさえも聞いたことがある名前だ。
リルはあまりの出来事に脳がうまく働かなかった。目を見開いたまま言葉を失ってしまったのだ。
それを見たシオンは後ろ髪を掻きながら「本当は名乗りたくはなかったんだがな」と独り言ちる。
「ご、ごめんなさい、私は気づかずに、なんて無礼な態度を…」
しどろもどろになりながらそんなことを言うリルに、シオンは「それは違う」と否定し、その頬に手を添えた。
「俺が名乗らなかっただけだ。お前に本当の自分を知られたくなかったから」
自嘲するような、どこか寂しいシオンの笑顔に、リルは自分がなんてことを言ってしまったのかと後悔した。
シオンはきっと、自分の名前を名乗りたくなかった。名乗ってしまえば、こうやって身分を抜きにシオンに対して行動できなくなるからと。
急に距離を置かれてしまうことほど寂しいこともないだろう。
リルは自分の拳を握った。
「シオン」
その声でシオンははっとリルの方を見る。
決意に満ちたその強いロゼの瞳に、シオンは目を見開いた。