花舞う街のリトル・クラウン
「シオン!」


リルの隣に立つシオンは目深に帽子を被っているが、その目はじゃれ合うアーディとメアを少し呆れたような目で見ている。


「いつまで経っても変わらないな、こいつらは」


溜め息交じりに呟くシオンは呆れているようだが、それでも嬉しさもあるようだった。何となく声色が優しいようにリルには感じられた。


「ほんとに、来てくれたんだ…あ、そうだ、今日は城にいなくて大丈夫なの?仕事は?本当は忙しいんじゃ…」


次々に疑問を投げかけるリルに、「一度にたくさん質問するな」とシオンは溜め息を吐く。


「忙しいのは昨日までだ。今日は休日。別に何もない」


休日ならなおさらゆっくりしたかったのでは、と言おうとしたリルに被せるようにシオンは「それに」と一呼吸おいてリルを見つめた。


「妹の命の恩人の願いだからな」


真剣な目は何も言わないけど「ありがとう」と感謝されているような心地がした。

真っすぐな紫の瞳から目が離せなくてリルが固まっていると、シオンに気づいたアーディが「シオン?」と呼びかける。


「きみ、こんなところにいていいの?」

「ああ、まあな」


シオンはリルから視線を逸らすと後ろ髪を掻く。

そんなシオンの様子を見たメアは「久しぶりね、シオン」と話しかけた。


「ああ。メアに会うのは数か月ぶりか」

「そんなになるのね。相変わらずのようで安心したけれど」

「元気そうでなによりだ」


< 130 / 204 >

この作品をシェア

pagetop