花舞う街のリトル・クラウン
「本当にありがとう。妹を救ってくれたのはお前だ」


シオンの言葉に、リルは照れくさくなって「もう、いいよ」と笑った。


「もしお前が王都にいなければ、妹は確実に死んでいただろう。それを思うと感謝せずにはいられない」


真剣な顔をするシオンから、リコリス王女のことをたった一人の妹として大切に思っていることが痛いくらいに伝わってきた。


「お前がここにいてくれて良かった」


シオンの言葉に、リルは「こちらこそだよ」と微笑みかける。


「アルトワールから王都に来る馬車に乗っていたとき、人を売りさばく悪質な集団から助け出してくれたのは、フルリエルで働くきっかけをくれたのは、シオンだよ」


自分が王都で生きているのは、全てシオンのお陰だとリルは思っていた。

シオンと出会わなければリルは今この場所にいなかった可能性が高いからだ。


「シオンに出会えて良かったよ」


それを聞いたシオンは「最初に出会ったときは驚いたがな」と溜息を吐く。


「あんなに世間知らずの田舎者の小娘が王都を目指しているっていうんだからな。何かの間違いではないかとさえ思ったぞ」


意地悪そうな顔をするシオンに、リルは「ひどい」と眉をひそめた。


「私は華の17歳だよ。人生のこれからを決める大事な年なの」


スクールを卒業して、今後の人生を決める大切な年。

その年に、リルは選んだのだ。

昔約束した男の子に会おうと。
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