花舞う街のリトル・クラウン
寝台も化粧台も机も、部屋にある全てがピンク色。そしてピンク色の花模様が描かれた壁紙が部屋を包み込んでいる。

そんなピンク色の部屋の中で、まるでお人形のような美しい容姿をした女性がソファに座っていた。

この方がクレーラ・ボストだと聞かなくても分かった。


「何をぼうっと突っ立っているの？邪魔よ」


眉間に皺を寄せて睨むクレーラに、リルは我に返って「すみません」と謝った。


「あなたにような田舎臭い娘があのフルリエルにいるなんて、信じがたいわね。不法侵入した犯罪者ではないのかしら？」


疑うような目を向けるクレーラにリルは「違います」と答えた。


「ちゃんとオリバーさん…店主のオリバー・ラビガータより言伝を預かって来ましたから」


そう言ってリルがポケットから取り出したのは、メッセージカードだった。

店を出発する直前にオリバーから託されたのだ。

内容は「またのご来店をお待ちしています」というような特に深い意味のあるものではなかったが、これを持っていることで、リルが本当にフルリエルのバイトであるという証拠になる。

万が一にも宅配先で不審者扱いされないための切り札であった。

そのカードを受け取ったクレーラは目を通すと「ふうん」と言って、「どうやら本当にフルリエルで働いているのね」と納得してくれたようだった。

リルがほっと胸をなで下ろしていると、「それで、何を持ってきたのかしら」と尋ねられた。



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