花舞う街のリトル・クラウン
「こちらになります。_____深紅のルミナリア」


花言葉は【豪華・きらびやか】。

それを贈られるということは、その花が似合う女性であるという意味。

いくら贈られ慣れているとしても、貴族の女性にとってはこの上なく嬉しいことだろう。

きっとクレーラ嬢もそうに違いないと思ってその顔を見ると、全く違った。

その表情は喜びなど少しもない、無表情に近いものだった。


「ふうん、ルミナリア。真っ赤なルミナリア、ねえ…」


顔と同じ大きさのそれを抱えながら優美な声で差出人を尋ねた。


「ええっと…シャルトル子爵からです」



差出人の名前を思い出したリルの言葉を聞いたクレーラは「シャルトル子爵なの?」とその名を繰り返す。


「シャルトル子爵とはこの前お会いしたの。お見合いをするために」


何気ないことのように言うクレーラだが、リルには驚きを隠せなかった。


「お見合い…」


自分とほとんど同じ年の少女が、結婚をする。それはリルにとって考えもしなかった選択だ。

花の国の17歳は自分の未来を選ぶ年とはいえ、結婚を考える結婚を考えるには少しばかり早すぎるとリルは思っていたのだ。

目の前にいる同い年の少女は、立場はおろか考えることさえも違うのだと突きつけられる。


「ねえ、貴女。名前は?」


突然のことに、リルは訳が分からないと思いながらも「リルです。リル・エトメリアと申します」と名乗った。


「リル・エトメリア。ふうん、花の名前なの」


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