花舞う街のリトル・クラウン
リルは突然のことに驚きながら、「何をされるのですか！」と息絶え絶えにクレーラの腕を掴む。

しかしクレーラにはリルの声など届いていない。


「それ、黄色い花のペンダント！」


リルの胸元のペンダントは、ガラス玉の中に黄色い花が詰まったペンダント。

それはクレーラがかつてシオンから聞かされていた、シオンが少女に贈ったというペンダントの特徴そのものだった。

クレーラは、シオンがペンダントを贈った少女がリルだとは夢にも思っていないが、それでもリルが黄色いペンダントを持っている少女であることに強い憤りを感じていたのだ。


「わたくしはこれほど思っているのに、あの人は全くわたくしを見てくれない！

黄色いペンダントなんて、大嫌いよ！」


クレーラは力任せにペンダントを引きちぎる。

強い痛みと共に、リルのペンダントは千切れてしまった。


「やめてください！」

「うるさい！」


リルの言葉なんて一切聞き入れずに、クレーラは引きちぎったペンダントを窓から投げ捨てた。

リルは目を見開いて慌てて投げ捨てられた窓から下を覗き込む。

緑色の芝生の上に落ちているはずのペンダントは、この位置からでは見つからない。

いつの間にか雨が降り出したらしく、外はいつもよりも暗くてなおのことよく見えない。


「さっさと出て行きなさい！目障りよ！」


クレーラは憤ったまま金切り声で叫ぶ。

リルは呆然としながら頭を下げてクレーラの部屋を出た。


部屋の外には部屋まで案内してくれた男性が不憫そうな顔で、青い顔をするリルを見つめていた。

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