花舞う街のリトル・クラウン
冷や汗が背筋を流れる。

どうしよう、と考えても答えは見つかるわけもない。

呆然と立ち尽くすリルに、2階から降りてきたオリバーはいつも通り「はやいのう」と声をかける。


「気分はどうじゃ」


体調のことを聞かれていると分かったリルは「大丈夫です」と平静を装って答えた。


「昨日は遅れて帰ってきたり体調を崩したりしてすみませんでした。ご迷惑おかけしました」


オリバーは花の方を見ながら「終わったことはもうよい」とぶっきらぼうに言う。


「今日は仕入れ先から新鮮な花が届く日じゃ。忙しくなるからきっちり働いてもらうからのう」


手厳しいオリバーの言葉に、リルは「分かりました」と返事をした。


花の国にまた新しい朝が来た。希望に満ちた朝が。

けれどリルの心は、星も月もない夜のように暗く沈んでいた。


オリバーが言っていた通り、その日はとても忙しかった。

午前中は各地から花が届いて、その受け取りと管理にてんてこまいだった。

花を受け取りながら、リルは暇を見つけてペンダントを探した。

昨日確かにテーブルの上にあったのだから、フルリエルの中にあるはずだ。

けれどいつまで経っても見つけられないまま、陽は空の一番高い場所まで昇って昼になった。

昼ご飯を食べ終わり、午後の仕事に取りかかろうとしたその時だった。


荒々しく店の扉が開いた。

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