花舞う街のリトル・クラウン
「いいから、つけてよ。そのためにわたしは直したのよ!」


照れ隠しのようにも聞こえるメアの言葉に、リルは頷いてその紐を首にかける。

以前までと同じ位置、重さ。やはりしっくりくる。


自然と頬が緩むリルに、メアは「そういう顔をしていなさいよ」と言った。


「リルには笑ってほしいのよ。わたしの友達なんだもの」


その言葉にリルは目を細めて頷いた。

シオンのことを知って、王都に来なければ良かった、とも思った。

けれどやっぱり来て良かったとリルは思った。

王都に来なければ、メアやアーディという大切な友人に出会えなかった。オリバーやリュートのように温かい人達に出会えなかった。


例えこの恋心が叶わなくてもいい。

シオンがいるこの街で、シオンが守るこの街で、シオンの友人として、想いを馳せながら大切な人達と生きるのも悪くない。

お堀のエトメリアのように一生懸命咲き誇って、見てほしい人がすぐ隣にいなくても、自分という存在を知ってくれていたらそれでいい。

時々見に来て、綺麗だと一瞬でも思ってくれたらそれでいい。


きっと、それがいい。


ペンダントを握りしめてそう思ったときだった。


「リル!」


フルリエルに走ってくる男の子の姿があった。


「アーディ?」


それはリュートの店のアルバイトであり、リルの友達でもあるアーディだ。

いつもの気の弱そうな雰囲気ではなく焦ったような顔をしているアーディに、リルは何事かと不安に思った。


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