花舞う街のリトル・クラウン
「え?」

まさか、と思って手を動かしてみるけれど、後ろ手に縛られていてどうにもならない。


「おやあ、起きちまったか」


身動きをとろうともがいていたのに気づいたのか、誰かの声がした。

おそらくはリルを縛った人、犯人だろうとリルは身構えた。

その声は中年の男性のようだが、あまりに暗くて何も見えない。


「薬の効きが悪かったんじゃねえか?」

「そんなはずはねぇけどな」


そんな会話が聞こえて、犯人が2人いることに気づく。いや、今は2人しか認識できていないだけで、本当はもっといるのかもしれない。

困った、この状況では逃げ出すこともできない。

リルが焦る気持ちを必死に押さえつけていると、声が聞こえてきた。


「さあて、嬢ちゃん」


こつり、こつり、犯人は足音を立ててゆっくり近づいてくる。


「気分はどうだい?」


その声でリルは気づいた。


この声の持ち主、それは、パンをくれたあの優しいおじさんだった。



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