花舞う街のリトル・クラウン
「どうして、おじさんが…」

「お、オレに気づいたのか」

驚くリルにおじさんは呑気にそんなことを言った。


「どうしてって言われてもなあ、こっちも生活があるからよ」

「生活…」

「生きるためには仕方ねえってこったあ、まあ、嬢ちゃんだって分かるだろ」


おじさんは詳しくは話さなかった。

ただ生きるためのお金に困っていることは分かった。


「…私をどうするつもり」

「そうだなあ」なんてたばこの煙を吐き出して、おじさんは何でもないことのようにこう言った。


「売る」


単純明快で恐ろしい言葉にリルは目を見開いた。


「淡い胡桃色の長い髪にロゼの瞳。それに嬢ちゃん17だったっけか。見た目も良くて若い娘ってえのは、結構いい値がつくんだよ」


どういう神経をしているのだろう、こんな発言をするなんて。身の毛がよだつ、というのはこの状況だとリルは思った。

リルは兄のことを思い返していた。今日の朝、兄が心配してくれたことが的中してしまった。お昼に助けてくれた人のことも思い出した。

それからもっと警戒しておくべきだったと後悔した。


「なあ、もう出発していいか?」


別の声が聞こえてそちらに目をやると、そこにいたのは馬借のおじさんだった。


「どうして、あなたまで…」

「ああ、起きたってのはこの嬢ちゃんだったか」


< 18 / 204 >

この作品をシェア

pagetop