花舞う街のリトル・クラウン
「どうしてお前達がここにいる」


シオンも弟妹の登場に驚きを隠せていなかった。

けれど王子も王女も少し勝ち誇ったような美しい笑みを浮かべて言った。


「愛する兄上の一大事とあらば、兄弟である私どもがお助けしないはずがありませんよ」


恭しく言葉を紡ぐノアに、シオンは眉間に皺を寄せて「本当は?」と問う。ノアの言動が冗談だとすぐに分かったらしかった。

冗談だと気付かれたことが分かったノアは肩をすくめて、リコリスが答えた。


「シオン兄様のためというのは、本当ですのよ。ただ、私もノア兄様も、他に理由がありますの」

「理由?」


首を傾げるシオンに、リコリスは言った。


「わたくしも、ノア兄様も、そこにいるリルのことはとても気に入っているのです。だからこそ、分かるのですわ。

シオン兄様の隣にはこの方しかありえない」


温かい笑みと共に告げられた言葉は優しかった。

自分たちの選択は決して間違いじゃないと、応援すると、力強く言ってくれる人の存在がこんなに大きいなんて、リルは知らなかった。


「それに、このお嬢さん、とんでもない経歴を持ってるからね。きっとそれを知れば、みんな納得せざるを得ないよ」


ノアは意地悪く笑うと恭しく頭を下げた。その後ろから現れた人物に、リルを始め役人達はみな目を見開いた。



「お、オリバー・ラビガータ!?」



小さい体に、たくわえられた逞しい髭。

花屋として大成功し、今や王都一の歴史を持つ花屋フルリエルの店主、オリバー・ラビガータの姿がそこにあった。
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