花舞う街のリトル・クラウン
「お、オリバーさん!?」


オリバーはいつも店にいる時となんら変わりない出で立ちでそこにいた。

そしてリルを見つけると「仕事はできたんじゃろうな?」といつものように厳しい目を向ける。

目を見開いたリルが何度も大きく頷いたのを見て、花を渡すだけでなく話もできたのだと分かり、それでもやはりいつものように「ご苦労」と声をかけた。


「お、オリバー・ラビガータ、あなたのようなお方が、どうして…」


役人達は混乱していた。

オリバーは役人達を一瞥すると「ふうん、なるほどのう」となにやら納得した様子を見せた。

役人達はみなフルリエルの客。普段の様子からオリバーは彼らの頭が固く、シオンとリルのことも否定しているのだろうことが分かったのだ。


「ノア王子とリコリス王女から頼まれてのう。この娘について説明せよと。王子と王女の要望なら断れぬわ」


それを聞いたノア王子は「よく言う」とあきれたように笑った。


「僕たちが相談したとき、散々嫌そうな顔をしたではないですか」

「とんでもない。ただ面倒だと思っただけですぞ」

「まったく、いつまでも面白いお方ですわね」


耐えきれないといわんばかりに王女は目を細めて笑ったが、オリバーはふいと横を向いたままだ。

王族も御用達の花屋の店主はその腕ばかりではなく人柄も好かれているらしかった。

オリバーは咳ばらいを一つすると、「すみませんのう」と役人達に謝った。


「うちの従業員が何をしましたかな」


その言葉に役人達は目を見開いて驚いた様子を見せて、視線がすべてリルに集まる。


「うちの、とは、まさか、この娘が、あのフルリエルの!?」


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