花舞う街のリトル・クラウン
「あとは頼んだぞ」というシオンの言葉に、テオは「かしこまりました」と頭を下げた。厄介ごとが増えた、と言わんばかりの顔だったが、リルと目が合うとにっこり微笑んだ。

きっといつもシオンに苦労させられているのだろうなとリルは少し不憫に思った。

テオのとなりにいるリコリス王女やノア王子に目を移すと、上品に微笑んでリルに手を振っている。エリオットも目を細めて会釈し、オリバーは相変わらずそっぽを向いて不機嫌そうな顔をしている。


リルが王都で出会ったのは、優しい人ばかりだった。

アルトワールの田舎から出てきた、何者でもないただの娘である自分に、とても温かく接してくれた。

リルの夢を、未来を、応援してくれた。


「ありがとうございます」


心からの言葉を残して、リルは最愛の人とともに国王陛下にお目にかかる。


いまだかつてないほどの緊張と不安がリルの胸に募る。

しかし、つながれた手の温かさが、隣にシオンがいることが、何より心強くて前を向く。


この先の人生を、この人と歩みたい。


リルの中にある強い気持ちが、その足取りを確かなものにしていった。







< 197 / 204 >

この作品をシェア

pagetop