花舞う街のリトル・クラウン
エトメリアは春を象徴する花だ。
薄桃色のかわいらしい花が春の訪れを祝福するように咲き誇り、王国のみならず他国でも愛好されていると聞く。
その育てやすさと見栄えの良さから、スクールや公園、民家にも植えられることの多い樹木だけど、王都の堀に植えられたエトメリアは格別だと噂が出回っていた。
一度見たら忘れることのできない光景だと、王都に行ったことのある人が興奮して語るのを幾度もリルは聞いており、リルも一度は見てみたいと思っていた花だ。
けれどこれは、リルが予想していたよりずっとずっと素晴らしい景色だった。
声をあげることもできずただその景色を瞳に映していると「もう行くぞ」と言われた。
その声で今まで自分のために立ち止まってくれたのだとリルは気づいて「すみません」と慌てて謝った。
「お前が今まで見てきたエトメリアとは何か違ったか?」
「大違いです」
馬を走らせながら問う彼にリルは即答した。
この花は今まで見たどんなエトメリアとも違っていた。
「花が、輝いている」
輝いているのだとリルは真っ先に感じた。光に当てられて、ではなく、花自身が。
ここで咲くことに誇りを持っているようで、淡い桃色の花なのに、とても鮮やかに感じた。
この景色を二度と忘れたりしないよう、リルは塀をくぐり見えなくなるまでずっと見ていた。
薄桃色のかわいらしい花が春の訪れを祝福するように咲き誇り、王国のみならず他国でも愛好されていると聞く。
その育てやすさと見栄えの良さから、スクールや公園、民家にも植えられることの多い樹木だけど、王都の堀に植えられたエトメリアは格別だと噂が出回っていた。
一度見たら忘れることのできない光景だと、王都に行ったことのある人が興奮して語るのを幾度もリルは聞いており、リルも一度は見てみたいと思っていた花だ。
けれどこれは、リルが予想していたよりずっとずっと素晴らしい景色だった。
声をあげることもできずただその景色を瞳に映していると「もう行くぞ」と言われた。
その声で今まで自分のために立ち止まってくれたのだとリルは気づいて「すみません」と慌てて謝った。
「お前が今まで見てきたエトメリアとは何か違ったか?」
「大違いです」
馬を走らせながら問う彼にリルは即答した。
この花は今まで見たどんなエトメリアとも違っていた。
「花が、輝いている」
輝いているのだとリルは真っ先に感じた。光に当てられて、ではなく、花自身が。
ここで咲くことに誇りを持っているようで、淡い桃色の花なのに、とても鮮やかに感じた。
この景色を二度と忘れたりしないよう、リルは塀をくぐり見えなくなるまでずっと見ていた。