花舞う街のリトル・クラウン
freesia - フリージア -
freesia【無邪気・あどけなさ】
*
__チチチと可愛らしい小鳥の音が聞こえてリルが目を覚ますと、そこは見たことのない場所だった。
どこかの家なのか分からないが、窓からは光が差し込んでいる。いつの間にか雨は止み、朝になったらしい。
リルはソファで寝ていたのだが、体を起こすとその両脇にたくさんの種類の花が所せましと並べられていたのに気づいた。
本当にここは、一体どこなのか。天国なのだろうか。
リルが首を傾げていると「起きたか」と年老いた男性の声が聞こえてきた。
その声ではっと顔を上げても、声の持ち主は見えない。あたりを見渡すが花と本が騒然と置かれていることしか分からなかった。
「ここじゃ、ここ」
その人物はようやく姿を現した。
本が大量に積み上げられた机の向こうからおじいさんがやってきた。おじいさんはとても身長が低いが体系はふくよかで、髪と同じグレーの立派な髭をなでている。
「あ、あの、これは…」
「お前さん、昨日の夜この店の前で行き倒れていたんじゃよ。熱出してのう。店の前で倒れられたら商売にならん」
眉をひそめるおじいさんに、リルは「すみません」と謝った。
「ここはお店なんですか…?」
「いかにも!」
花で彩られた店内を見渡すリルにおじいさんは重々しく頷いた。
「ここは【フルリエル】。古くからこの王都で花屋を営んでおる」
フルリエル、それは花を意味するこの国の言葉。花屋の名前にしては安直すぎないか、なんて考えが一瞬リルの頭に浮かんだがすぐに首を横に振ってそれを打ち消す。
「まあ、お前さんも熱も下がったようじゃし、元気そうじゃな。じゃあもう店を開けるからお前さんも行っとくれ。お大事に」
背を向けて玄関の方に向かおうとするおじいさんを「待ってください!」とリルは慌てて引き留めた。
「なんじゃ?」
これ以上わしに用があるのかとおじいさんは顔をしかめた。
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__チチチと可愛らしい小鳥の音が聞こえてリルが目を覚ますと、そこは見たことのない場所だった。
どこかの家なのか分からないが、窓からは光が差し込んでいる。いつの間にか雨は止み、朝になったらしい。
リルはソファで寝ていたのだが、体を起こすとその両脇にたくさんの種類の花が所せましと並べられていたのに気づいた。
本当にここは、一体どこなのか。天国なのだろうか。
リルが首を傾げていると「起きたか」と年老いた男性の声が聞こえてきた。
その声ではっと顔を上げても、声の持ち主は見えない。あたりを見渡すが花と本が騒然と置かれていることしか分からなかった。
「ここじゃ、ここ」
その人物はようやく姿を現した。
本が大量に積み上げられた机の向こうからおじいさんがやってきた。おじいさんはとても身長が低いが体系はふくよかで、髪と同じグレーの立派な髭をなでている。
「あ、あの、これは…」
「お前さん、昨日の夜この店の前で行き倒れていたんじゃよ。熱出してのう。店の前で倒れられたら商売にならん」
眉をひそめるおじいさんに、リルは「すみません」と謝った。
「ここはお店なんですか…?」
「いかにも!」
花で彩られた店内を見渡すリルにおじいさんは重々しく頷いた。
「ここは【フルリエル】。古くからこの王都で花屋を営んでおる」
フルリエル、それは花を意味するこの国の言葉。花屋の名前にしては安直すぎないか、なんて考えが一瞬リルの頭に浮かんだがすぐに首を横に振ってそれを打ち消す。
「まあ、お前さんも熱も下がったようじゃし、元気そうじゃな。じゃあもう店を開けるからお前さんも行っとくれ。お大事に」
背を向けて玄関の方に向かおうとするおじいさんを「待ってください!」とリルは慌てて引き留めた。
「なんじゃ?」
これ以上わしに用があるのかとおじいさんは顔をしかめた。