花舞う街のリトル・クラウン
この国で花束はさして珍しいものではない。

誰だって送るもので、ちょっとした気持ちを伝えるときに花がその手伝いをする。

彼だってそうだろう。

花束は包装紙もリボンも全てトーンの異なるピンクで統一されていた。

これは女性に贈るものとみてまず間違いないだろう。

花はというと一種類のみだった。

フリージア、少し丸みを帯びた五つの花弁をもつ花。その黄色と白が選ばれたらしかった。

このフリージアの花束から、誰に贈るものか考えろなんて無理難題を突き付けられてしまったとリルは頭を抱えた。

フリージアの花言葉は、「あどけなさ」、「純潔」、「親愛の情」。そこまで考えて、リルはまた違うことを思いだした。


(フリージアは確か、花の色によっても花言葉が違ったんだっけ。)


黄色のフリージアは「無邪気」。白のフリージアは「あどけなさ」。この二つの意味のある花を女性に贈るとしたら、誰に贈るのか。

リルはひらめいた。



「妹さん、ですか?」


オリバーは目を見開いた。


「なぜ、そうだと?」


彼は質問をした。リルはゆっくり答えた。


「ピンク色の包装紙やリボンが選ばれているので、女性に贈るのだと思いました。そしてこの花、フリージアの花言葉は、あどけなさ、純潔、親愛の情。そんな花言葉を持つ花を贈るのは妹さんだろうな、と」


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