花舞う街のリトル・クラウン
「しかし、そんじょそこらの花屋とは違って厳しいからのう、覚悟しとれ」

「頑張ります!」

オリバーはそっぽを向いたままだった。


「あなたもありがとうございます!」


リルはこの話を提案してくれた彼の方に向かってまた頭を下げた。


「俺は別に何もしていない。ただ俺は暇つぶしにいいものを見れたと思っているだけだ」

花束を抱える彼にオリバーは「とんだとばっちりを食らったわい」と睨みつけていた。

「けれど、手伝ってくれる人が欲しかったのは事実だろう?」

「それはそうじゃが、こんな形で突然雇うことになるとは思っておらんかったんじゃ」

そんな言い合いをしている途中でオリバーは「そうじゃ」と思い出したようにリルに尋ねた。


「お前さん、名は?」

「リルです。リル・エトメリア」


オリバーは「リル・エトメリアか」と顎を触りながらリルの名前を復唱した。


「エトメリア、春の訪れを知らせる名じゃのう。ちょうど今の時期に咲く」

何か考えるようなそぶりをして、それからオリバーはリルを見てこう言った。


「よい名じゃ」


それは何より嬉しい言葉だった。

自分自身を受け入れられたような、そんな心地がするようでリルはたまらなく嬉しかった。


「そうじゃ、お前さん、アルトワール出身じゃったか。今どこに住んでおるんじゃ?」

「いえ、昨日来たばかりなんです。そちらの方に連れてきてもらって」

「そちらの方?」

オリバーは彼をじっと見て、「ほお!珍しいことがあるもんじゃのう」とニヤリと目を細めた。

「ちょっと事情があっただけだ。深い意味はないからそんな目を向けるな」

彼はそっぽを向いて少し苛立った様子を見せた。

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