花舞う街のリトル・クラウン
「ハイビスカスを見たことないんか?」

「まさか。でも、春に咲いているのは初めて見ました」


まじまじと花を見つめるリルの様子に、オリバーは得意げに「こいつは春に咲く品種じゃ」と言った。


「最近開発された品種でのう、王都でもいち早く入手したのじゃ」


自慢げに高笑いするオリバーをよそにリルは花に魅入っていた。


「そうじゃ、お前はこのハイビスカスを生けてみい」

「え?」

「え?じゃないじゃろう。これからも【フルリエル】で働きたいのなら、その心意気をみせてみい」


挑発的なオリバーの言葉にリルの反骨精神は焚きつけられる。


「…やります。やらせてください」

「ほぉーほっほっほ、それは楽しみじゃのう!」


にたりと嫌みったらしい笑みを浮かべるオリバーをきっと睨みつけながらもリルはやる気に満ちていた。

無数の意図が絡み合う無言の見つめ合いが続く中、また厨房の方から大きな音が聞こえてきた。

その音に弾かれたようにリルとオリバーは目をやる。


「いたたたた……」


姿を現したのは、リュートに怒鳴られていた従業員・アーディだった。
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