花舞う街のリトル・クラウン
アーディはどうやら躓いたようで、厨房で使う金属製の器を床に落としてしまったらしかった。そのせいで、どんがらがっしゃんとけたたましい音が店中に響いたのだ。


「おい、アーディ!」

「す、すいません!」


例の如く、アーディはリュートから怒鳴られた。

「そそっかしい奴じゃのう」オリバーは溜め息を吐く。リルもそれを否定することはできずにいた。

しばらくの作業の後、飾り付けが終わった店内を見渡してオリバーは一言、「まあ、こんなもんじゃろう」と言った。

その言葉を聞いてリルはほっと胸をなで下ろし、壁一面に飾り付けられた春咲きのハイビスカスを眺めた。

華やかなピンクがかったオレンジ色の花が鮮やかに咲き誇っている。

さあ見てくれ、この花弁を、この姿を。そう花が語りかけてくるような感覚さえするほど、花が生き生きしている。

「花があるだけでこんなに雰囲気が違うのですね」

ハイビスカスの花言葉は【華やか】。きっとこの店の未来も華やかで明るいだろうと信じて疑えないほどにハイビスカスは店を明るくする。

オリバーは満足そうに「それが花屋が面白い理由じゃ」と頷いた。

「どの花を選ぶか、どう飾るか。それだけでいかようにも伝えたい思いを表現できる。それが難しくとも面白いところなのじゃ」

オリバーのシトラス色の小さな瞳が輝く。

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