花舞う街のリトル・クラウン
「え、ええ。お役に立てたなら良かった」


少しだけ引きつるようなリルの顔を見たアーディは、しまったと思ったのか、パッと手を離して「ごめん!」と謝った。


「とても悩んでいたから、解決策を聞けて嬉しくって」


そう言って頭をかくアーディに、リルも思わず笑顔になってしまった。


「そういえばリュートさんが言っていたけれど、きみはあのフルリエルで働いているんだって?」


「すごいなあ」と羨望の眼差しを向けられて、リルは「凄くないよ」と首を振った。


「王都に来るときに縁のあった人に助けられて…」


そこまで言うと、アーディは「きみも王都に移り住んできたんだね」と驚きの声をあげた。


「もしかして、アーディさんも?」


アーディは頷いた。


「僕は王都には出稼ぎに来ているんだ」


「どこから来ているの?」とリルは問いかける。


「シャルクラーハだよ」

「シャルクラーハって、あの商業の街の?」

「そう、そのシャルクラーハ。王国一の商業の街だよ。だからこそどこの場所でも商売の競争がすごくてね。自分の店だけで食べていけるところなんてほんの一握りなんだ」

「だから家族のためにも僕はここで頑張らないと」と笑うアーディに、リルは「すごいね」と心から彼を賞賛した。


「アーディは家族のために頑張っているんだね」


リルの言葉に照れたのか、アーディは「そんなにすごいことじゃないさ」と笑った。

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