花舞う街のリトル・クラウン
リルは首を横に振って立ち上がろうと体に力を入れる。

「私は大丈夫。それより、犯人を見つけなきゃ」

犯人の目星ならついていた。

改装祝いに火事を連想させる赤い花束を贈った人、フラムルージュの花言葉。過去、動機からも犯人になり得るのはその人しかいない。

そしてその人は今ここにいるのに。


「お前には無理だ」


シオンは突き放すように言った。


「立てないだろう?」


その言葉の通りだった。力を入れて立ち上がろうとしも、足はまるで木の枝に変わってしまったみたいに動かなかった。

シオンもミシェルも助かって安堵してしまったのだろうか、気持ちもどこか緩んでいるようで、けれど一度緩んだ気持ちは再び張り詰めてはくれないようだった。

リルは自分が情けなくてしかたなかった。燃える店を呆然と見つめるリュートを見ると、立ち上がることさえできない自分が情けなくて悔しかった。


「後は任せろ」


鎮火作業が始まり火が消えた店をまっすぐ見つめながら立ち上がった。

それからシオンは騎士団員に呼ばれて人混みに姿を消した。


「シオン!」


名前を呼んでもシオンは振り返りはしなかった。

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