花舞う街のリトル・クラウン
「なら、ここに現れる可能性は?」

「絶対とは言えねえが、無くはねえな」


「そうか」と答えると「少しここにいさせてくれないか」と聞いた。


「それは、構わねぇが…」


リュートはアーディと顔を見合わせた。


「シオン、その仕事はきみがわざわざ出て行くほどのことなのかい?」


アーディは鋭い質問をした。

それはまるで「お前はそんなことをするな」という忠告のようでもあって、それを聞いたシオンは「お前もテオのようなことを言う」と溜め息を吐いた。


「皆きみを心配しているんだよ」

「はいはい」

シオン返事をしたが微塵も理解はしていないようだった。やり過ごすために返事をしたようで、アーディは眉間に皺を寄せて「本当に分かったんだか」と溜め息を吐いた。


「でもここにいるんなら商品は買ってくれよ、常連さん」

「ちゃっかりしてるな、リュートは」

「今うちは大変な時なもんでね」


シオンはお金を差し出すとリュートの店で一番人気だという商品を頼んだ。

それはパンに肉が挟んであるもので、その肉の味付けはリュートが師匠から受け継いだ門外不出の伝統の味なのだそうだ。


「お前さんも食べて行くかい?」

「え?」


突然のリュートの問いにリルは驚いた。

リュートは返事を聞く前にリルの分の商品を作り出した。
< 75 / 204 >

この作品をシェア

pagetop