花舞う街のリトル・クラウン
手際の良いリュートはあっという間に作り上げてリルに差し出す。


「奢ってやるから」


にっこり微笑まれて、リルは戸惑いながらそれを受け取る。

シオンはそれを横目で見て「今、リュートの店は大変じゃなかったのか?」と言った。


「ああ、大変さ。だからお前さんが奢ってくれ」


そう言ってリュートはシオンに左手を差し出す。ここに代金を乗せろと言わんばかりの手のひらに、シオンは眉間の皺を深くした。


「リュートのおごりじゃないのかよ」

「誰もそんなこと一言たりとも言ってないだろ」


するとシオンは「これだからシャルクラーハ仕込みの商人は恐ろしいんだ」と舌打ちをしてポケットから代金を取り出し支払った。リュートは「まいどあり」とご機嫌な表情だが、シオンは不機嫌そのものだ。

リルはなんだか申し訳なくなってシオンを覗き込んだ。それに気づいたシオンは「さっさと食べろ」とぶっきらぼうに言う。


「残したら許さない」


その言葉を聞いてリルはなんだか面白くて吹き出してしまった。湧いて出てくる笑いを堪えようにも堪えきれなかったのだ。


「何が可笑しい」


シオンは鋭い紫の瞳で睨みつけるが、その迫力も僅かに赤らんだ頬のせいで効力はなかった。


「シオンもそんな表情をするんだね」

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