花舞う街のリトル・クラウン
「そんなとは何だ」

「赤い顔。頬が赤くて、なんだか可愛い」

「ふざけるな」

明らかにシオンは不機嫌になっていくのだが、リルには新鮮で面白くもあった。

あのシオンが冷たい顔と仄かな微笑みの他にこんなにも可愛らしい顔をするのだということが現実味がなく、なんだか愛しささえ感じてしまうほどだったのだ。


「あのシオンが照れるなんて。明日は雪でもふりそうですね」

「ああ、雹(ひょう)が降るかもな。天幕が破れなきゃいいが」


そんなことを冗談なのか本気なのかどっちつかずの言い方をするアーディとリュートに、シオンは「お前らふざけるのもいい加減にしろ」と睨みを効かせた。


「それよりも驚くのは、あのシオンをここまで翻弄するリルという存在ですよ」

「とんでもない嬢ちゃんが現れたもんだ。あのシオンがここまでおちょくられてるなんてなあ」


睨まれてもなおシオンを小馬鹿にする話を続ける二人に、「お前らなあ…!」とシオンは怒りを露わにした。

その時だった。

店の暖簾がひらりと舞って、誰かが入ってきた。


「へい、いらっしゃい!って、お前は!」


笑顔から突然睨みつけるような厳しい表情に変わったリュートに、その場にいた全員が入ってきた客に目を向ける。

リルとアーディは目を見開き、シオンは鋭く睨みつける。



「ダン、何しに来た!」


「何って、火事見舞いだよ」


ニタリ、ダンは口角を上げて気味の悪い笑顔を見せた。
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