花舞う街のリトル・クラウン
「いやあ、それにしても災難だったなあ、店が早々に燃えてしまうなんて」


リルの隣の席にドカッと座り、ダンはそんなことを言う。


「不運だなあ」


皮肉や嫌味にも取れるその言葉にリルは心底嫌気がさした。

リルはこの男が火事を引き起こしたと確信していた。

この男が前にやったこと、それからフラムルージュの花束、この男が怪しいと言えるだけの証拠は揃っていた。

けれど確証はなかった。何しろあの男が絶対にやったのだという証拠はどこにもない。ただ怪しいということしか言えないのだ。

リュートやアーディも悔しさでいっぱいの表情をしていた。2人ともリルと同じように、ダンがやったのだと思っているようだった。けれど同じように確証はない。

やるせない悔しさがふつふつと心を満たしていく。


「おいおい、そんな目で人を見んなって」


リルの視線に気づいたらしいダンはリルの肩に腕を回した。


「な、何ですか。やめてくださいよ」


突然にことに驚きながらリルはその腕をどけようとする。けれど大の男の腕はそう容易くは動かない。


「嬢ちゃん、よく見るといい顔してんなあ。これから暇?」

「ちょ、ちょっと…」


強引に話を進めるダンに断りを入れようとしたとき、リルの隣に座っていたシオンが立ち上がった。


「やめろ」


まるで氷にように鋭い声だった。
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