花舞う街のリトル・クラウン
「シオン!やっぱりあの火事の原因はダンなんだね!」


アーディは興奮したように声をあげる。


「赤い花束、フラムルージュ。そして過去の行い。その全てからその可能性は高いと判断された」


リュートは悔しそうに拳を握りしめてダンを見つめた。

リュートとダンの間に何があったのかはリルには分からない。知る由もない。けれどきっとリュートはその胸の中でいろんな思いを巡らせているのだろう。


「火事?へっ、何のことだか!」


痛みに呻きうずくまっていたダンはそう言って鼻で笑いながら、ゆらりと立ち上がった。


「フラムルージュの赤い花束がどうした?酒を出す店で客同士の喧嘩なんざ良くある話だろう。それだけで俺が火事起こしたことになるってか?ええ?

どれだけ怪しかろうが、憎かろうが、確たる証拠になりえねえだろうが!

疑わしきは罰せよってか?国は随分と偉くなったもんだなあ!」


狂ったようなその叫びは、非の打ちようがないほどの確かな正論だった。

ダンは確かに店を改装せざるを得ない状況に追い込み、改装祝いに禁忌とされる赤い花束、それも花言葉が【炎】であるフラムルージュを届けた。

疑わしくてしかたがない。状況判断をするなら、真っ先に疑われるべきはこのダンしかなかった。

けれどダンがやったのだという確たる証拠はない。

全てはあくまでも可能性の話だ。

言い返したいことは山ほどあるのに、圧倒的な正論に向かって言える言葉なんてどこにもなかった。


「そうだ。お前が火事を起こしたという確固たる証拠はない」


シオンは静かに言った。

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