花舞う街のリトル・クラウン
ダンはしてやったりと言わんばかりにニタリと気味の悪い表情を浮かべた。

リル達がやるせない苛立ちを覚える中、さらにシオンは言った。


「お前の罪状は放火罪ではない。

誘拐罪、人身売買罪。それがお前の罪だ」


それから懐から逮捕状を取り出してダンに見せつけ、罪状を述べる。


「ローダンを拠点に行われる誘拐及び人身売買を行う集団。その親玉がお前だろう、ダン・クレール」


その言葉でダンの表情が崩れた。


「な、なにを根拠のないことを__」


焦りながらも平静を装って答えるダンに、シオンは冷静に言い放つ。


「ローダンで誘拐・窃盗・人身売買をする輩がいて捕まえたら、洗いざらい吐いてくれた。ローダンで手に入れた人々を別に人と取引するつもりだったと、その相手がダン・クレール、お前だとな」


その言葉でリルは思いだした。

王都に来る前に人身売買をするおじさん二人組に捉えられて売り飛ばされる一歩手前だったこと。

その時のことを思い出してぶるりと身が震えた。自分の手を握りしめながらシオンを見つめると、シオンが小さく頷いた。

それを見て疑いは確信に変わった。自分はこの人のところに売られたかもしれないと。


「火事の件はあくまで"その疑いがある"というだけだ。今は騎士団を中心に調べが進められている。けれど人身売買の方には確証がある。言い逃れはできない」

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