花舞う街のリトル・クラウン
「なんて切ない話なのん!なんて健気な話なのん!感動して涙が止まらないわん!」


そしてまた「うおーん!」と涙を流すマドレーヌはリルの話にひどく感激しているらしかった。

まるで犬の遠吠えのような声をあげて泣き続けるマドレーヌに、リルは遠慮がちに尋ねる


「マダムはご存知ないですか?幼い頃アルトワールに行った、私と同い年くらいの男の子のこと」


手の甲で涙を拭いながら、マドレーヌは「ごめんなさいねん、そんな知り合いはいないのん」と謝った。


「そうですか、ありがとうございます」


眉を下げて微笑むリルを見て、マドレーヌは「んもう、なんていい子なのよん!」とまた泣き出し、リルを強く抱きしめた。

突然のことに戸惑うリルにマドレーヌは言った。


「リル、決して諦めちゃだめよん。どれだけ時間がかかっても、あなたの探している人は必ず会えるわん」


必ず会える。そう他人から言われるのはリルにとっては初めてのことで、リルは感動して涙が溢れそうになった。


「ありがとうございます」


なんて温かい人だろう。その言葉でリルの心は温かくなり前を向ける。途方もない旅を続けられる。


「さあ、行ってらっしゃい」


解放されたと思ったら、マドレーヌの優しい笑顔が見えた。涙のせいで化粧が崩れお世辞にも美しいとは言えないが、優しさで満ちた温かい笑顔。


「行ってきます」


リルは笑顔で応えた。


< 95 / 204 >

この作品をシェア

pagetop