花舞う街のリトル・クラウン
アーディもメアも楽しそうに語る。

リルにとって王族の誕生日は特に何の意味もなかった。

アルトワールにいた頃も、リルだけではなく周りの人々さえも王族の誕生日だからとはいえ何か祝うこともなかったのだ。


「王族誕生祭の日には"リュートの店"も王女様の誕生日に合わせた特別料理を出すんだよ。もし暇だったらおいで」

「"クリーム・クレーム"でも新商品を出すわ。リルならおまけするわよ」


2人の誘いにリルは「ありがとう」と微笑んだ。


「王族誕生祭の午後は暇をもらえることになっているんだ。そのときに時間があえば案内するよ」

するとメアは「アーディもなの?」と目を丸くした。

「わたしも午後から時間があるのよ。午後はゆっくりしておいでってマドレーヌさんが言ってくれたの」

「それだったら3人で回ろうか」

アーディの提案に、リルは「シオンは?」と尋ねた。


「シオンは誘わないの?アーディ、シオンととても仲が良い様子だったから」


リルの言葉に驚いたのか、メアは「リル、あなたシオンと知り合いなの?」と尋ねる。


「王都に来るときにも、"フルリエル"で働くときにも、シオンに助けてもらったの」


思い返せば、シオンには助けられてばかりいる。

王都に来るときには人身売買を企てるような輩から守ってくれたし、働く場所もなく路頭に彷徨うところだったときも、この前の火事のときも。

シオンがいなければリルは何度死んでしまっただろうか。そんなことを思うほどだ。


「…シオンは、当日は忙しいかもしれないね」


アーディは目を伏せて微笑む。

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