花舞う街のリトル・クラウン
「シオンは、仕事をしているの?」

「仕事か。そうだね」

「何の仕事なの?」


するとアーディとメアは顔を見合わせて、それから2人とも優しい笑みを浮かべた。


「リル、きみはシオンと関わりながらもシオンの仕事を知らないということは、きっとそれはシオンの望んだことだ。だから僕達からは何も言えない」


「ごめんね」とアーディは眉を下げて申し訳なさそうに謝る。

リルはそれに驚いて「こちらこそごめんね」と頭を下げた。


「きっとシオンも言いたくないことだったんだよね。配慮ができてなくて本当にごめんなさい」


するとメアは「あいつはそこまでは考えていないわよ」と溜息を吐いた。


「けれどすぐにでも分かるはずよ。シオンが何者なのか。あなたがフルリエルで働いているならね」


アーディとメアの言葉はどれも謎めいていた。

どういう意味かと問いたい気持ちもあったが、ぐっと心の中にとどめる。


アーディもメアも教えてくれなかったということは、きっともうすぐ分かるということ。

今はまだ自分が知るときではないというだけだ。


そう思う一方で、やはりシオンのことが気になってしかたがない。


シオンは何者なんだろう。

一帯何をしているんだろう。


ふっと見上げた王都の空にはいくつも雲が浮かんでいた。

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