素敵な夜はあなたと・・・
夕食の準備を済ませた優也は茜が部屋から出てこないのをかなり気にしていた。いつもなら、「手伝うね!今夜のおかずは何?」と笑顔を振りまいてくる。なのに、キッチンで一人炊事をしているのはとても寂しく感じてしまった。
夕食の準備が終わると優也はソファーに腰かけ天井を仰ぎ見ていた。そして、クリスマスをどう過ごせばいいのかと何度も考えた。茜に嫌な思いをさせずに済む方法はないのだろうかと。しかし、何度考えても答えは出てこなかった。
「美味しそうな匂い」
ご飯の匂いにつられた茜がリビングへとやって来た。すると、茜が目を少し赤くして優也に微笑みかけた。
茜の赤い目に驚いた優也はソファーから飛び起きると急いで茜の所へと駆け寄った。茜の頬に触れると目尻に涙の痕を見つけ指先で目尻を拭った。
「どうしたんだ?何かあったのか?」
「ううん、友達に薦められた本を読んでいたら、悲しすぎて涙が出ちゃった。」
茜の笑顔は偽りの笑顔だと分かっている優也には、無理して笑う茜が痛々しくて抱きしめていた。心の中で「ごめん」と何度も言いながらも茜をどう扱っていいのか未だに決めかねていた。
「平気だよ。ただの本だから。それにね、もっと面白いことをしようって話しになったんだけど。」
「どんな話になったんだい?」
優也は茜の目尻をもう一度指で拭うと頬を引き寄せて茜の顔をマジマジと見ていた。