素敵な夜はあなたと・・・
「友達にクリスマスパーティ呼ばれたの。行ってもいい?」
茜のその言葉に優也は救われた気分がした。クリスマスを楽しみにしていた茜に期待通りのクリスマスを過ごせないと感じていた優也には有難い誘いだった。
「ああ、いいよ。友達とのパーティは大事だからね。行っておいで。俺はその日は遅くまで仕事になるかも知れないから遠慮しないでいいよ。楽しんでおいで。」
優也の笑顔はとても優しいけれど、茜にはそれがとても残酷にも感じた。優也は優しい夫だけれど夫ではない。どんなに優しくされてもそれは舞阪商事(株)の会長の孫だからだと、茜はそんな結論を出していた。
クリスマスも一緒に過ごしてくれない人は、どんなに優しくても夫ではない。やはり他人なのだと茜はそう感じてしまった。
「ごめんね、せっかくのクリスマスなのに。」
「俺の方こそごめんな。仕事が抜けられなくて。」
「仕事頑張ってね」
茜は仕事だと言う優也の言葉を聞いて、クリスマスのようなイベントの時は妻より仕事を優先させるのだとハッキリ分かってしまった。
家事仕事や学校への送迎は毎日しているが、これはすべて会長である祖父からの命令でやっているもの。だけど、クリスマスのイベントは祖父から命令が下ったわけではない。優也にとって祖父からの命令は仕事の一つに過ぎないのだろうと茜はそんな気がした。