素敵な夜はあなたと・・・

「私はもう人生は決まっているのよ。結婚したのだからあなたとの将来を考えなければいけないんでしょう?」

「確かに俺達は結婚した。会長のたった一人の孫の君は会社の跡継ぎとなる子供を生む必要はあるが、それはまだ先の話だよ。今は将来のために勉強して高校を卒業することだ。そして、大学へ行き更に必要な知識を身につける。」


 優也が語るその表情はとても優しい瞳をしている。


 茜は初めて会った座敷でもそれは感じていた。とても綺麗な瞳をしていて優しい眼差しを向けてくれる。


「大学へ行って良いの?」

「当たり前だろう。良いのじゃなくて、行かなければならないよ。だから、少しでも君が勉強できるような環境を作りたいと思っているよ。」

「環境を?」

「そのつもりだよ。だから、生活に少しでも不満があったら遠慮なく言ってくれ。茜のためなら何でもするからね、」


 生まれて初めて男の人に『茜のためなら何でもする』と言われた。生まれて初めての言葉に茜は感激してしまったが恥ずかしくて俯いていた。その表情は赤く染まり恥じらいのある初心な花嫁の姿を見せていた。


 そんな茜を見て優也は「大事にするよ」とポツリと言ってくれた。

 
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