素敵な夜はあなたと・・・

 優也はクリスマスイブの夜は美佐に断られたこともあり一人ホテルへと泊まりに行った。美佐に会った後に茜とは流石に顔を合わせ難いと思っていた優也は前もってホテルを予約していた。

 優也がマンションへ戻ったのはクリスマスが終わろうとしていた頃だ。夜も更けてきた頃、茜はもう眠っただろうと思う時間にマンションへと帰った。


「ただいま」


 つい、いつもの癖で言ってしまったが、茜を起こしてはと思って静かにドアを閉めた。すると、玄関に見慣れぬ女物の靴があることに気付いた優也は嫌な予感がし急いでリビングへと行った。

 リビングのドアを開けるとそこには会長の私設秘書の櫻井が一人待っていた。


「あの、会長が何か? 何かあったんですか?!」

「随分遅いお帰りですね。今日のことは会長には伏せておきますが貴方の行動は逐一会長へ連絡が行くようになっていますので、朝帰りなどは謹んで下さい。」


 まるで監視されていると言わんばかりのセリフに優也はかなり頭に血が上りそうになった。しかし、会長付きのこの秘書は優也以上に会長に信頼されている人物だ。下手に騒げば会長へ報告されてしまうと優也は怒りを何とか鎮めていた。


「会長のお孫様の茜様は学業を充実させるために暫くあなたと別居になります。高校卒業した後はまたこちらでこれまで通りに暮らして頂きます。但し、今度は間違いなく後継者を儲けることが条件です。」

「何故、急に別居など・・・・会長命令ですか?」

「いいえ。茜様のたってのご要望です。」


 優也はこれまで順調に暮らして来た茜が何故そんな要望を会長へ申し出たのか納得出来なかった。

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