素敵な夜はあなたと・・・
「茜のことを大事に考えてくれるみたいで嬉しいわ。」
美佐の正直な気持ちだった。理由はともあれ美佐にとっては父親の会長が良かれと思って決めた縁談なのだから、このまま上手くいって欲しいと願っていた。
だから、茜が姿を消したことで優也が茜を気にしていることは良い傾向だと思えた。
「それは君の娘だからだよ。」
「・・・・そうかしら?」
優也はあくまでも美佐の娘だからと強情にも言うが、その表情は以前の優也の表情とは違っていることに気付いていた。以前のような熱い目をして美佐を見ていない事に優也は気付いているだろうかと、美佐は思わずフッと笑ってしまった。
以前とは少し違う優也の顔に、美佐には優也が茜を心から心配しているのだと思えた。もしかしたら、父の言う通り茜が卒業した頃には二人は良い夫婦になっているのではないかと思えた。
けれど、優也は態度を崩さなかった。最後まで自分は美佐へ気持ちがあるのだと言いたそうな口ぶりだった。
「それ以外なにがあるって言うんだよ。」
「いいえ。別に。ただ、今の優也さんは茜を一番に考えてくれているようで嬉しいから。」
「だから、それは君の娘だからで。」
どんなに口先ではそう言って見せても、優也が以前とは少し変わって来たことに美佐は笑っていた。