素敵な夜はあなたと・・・
気付いた気持ち

 自分のマンションへ戻るとソファーに寝そべりながら拳を握るとクッションを思いっきり叩いていた。


「なによ、お母さんってば、あんなにヘラヘラ笑って。優也さんも酷いよ・・・こんな所でお母さんに会わなくてもいいのに。」


 クリスマスから後の一人暮らしでは、年を越すのも新年を迎えるのも一人寂しくマンションでポツンとソファーに座ったまま過ごした。

 お正月には普通なら新婚夫婦揃って着物姿で実家へ新年の挨拶へ行くところ、茜は母親の美佐の顔を見たくなくて一人マンションに残って過ごしていた。

 新学期が始まっても、学校の送迎は優也の姿はなく、友達と待ち合わせをして電車やバスを使って学校まで通った。

 雨の日は傘をさし、風の強い寒い日はマフラーを首に巻いたり、厚手のコートを羽織っては寒さ除けをして学校まで通っていた。

 どんなに疲れて帰って来ても、それから買い物へ行っては料理を作っていた。優也に習って少しはレパートリーが増えたし、洗濯機や乾燥機も自分で扱えるようになった。掃除も、日頃、優也がやっていたのを思い出しながら真似をしてやっている。

 なにもかも、優也を思い出しながら生活する茜は、優也の存在を忘れたくても忘れられない。

 自分の母親に恋愛感情を持っている夫など受け入れられないのに、そんなのは許されない事なのに、どうしても思い出してしまう。

 包丁を持てば「こうやって持つんだよ」と、優也の声が今にも聞こえてきそうだ。洗濯物を洗濯機へ入れれば「色物は別にして洗うんだよ」と優也が教えてくれているようだ。

 何をするにしても優也の声が聞こえてしまう茜はそんな毎日がとても辛く感じる。

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