素敵な夜はあなたと・・・
茜は優也を忘れようと必死に辛さを吹き飛ばしながら毎日を送っていたのに、そこへあんな二人の逢引姿を見せ付けられては、卒業しても優也とは一緒に暮らせるわけなどないと落ち込む一方だった。
「絶対に離婚よ!! あんな奴。離婚してやるんだから!」
クッションを床目がけて投げつけると茜は涙が溢れ出し止まらなかった。「なんで?」と涙の理由を知りたい茜だったが涙の理由など知りたくもなかった。
こんなに悲しい思いをするのに理由はないと自分に言い聞かせていた。
二人の逢引にショックを受けた茜は学校を休んでしまった。
何日間も理由を付けては学校を休んでいた茜を心配したのは同じクラスの斎藤和樹だ。茜といつも楽しそうに教室で会話をする斎藤は、急に学校へ来なくなった茜を大層心配しマンションまでやって来た。
「茜、なんで学校来ないんだよ? みんな心配してるぞ。」
一日や二日ならば風邪という事も考えられるが、流石に二ケタの日数になると斎藤が心配して茜のマンションへとやって来るのも無理はない。
そして、初めて入る茜のマンションのリビングをキョロキョロ見ながら落ち着かない様子の斎藤は照れている様子だった。
「それで、ここまで何しに来たのよ。」
「心配して来てやったんだろう?! 友達を代表してだな!」
「ありがとう、でも、大丈夫だから。」
茜は窓の外を眺めながらため息ばかりを吐いていた。ソファーに座っている斎藤は茜が遠い目をしている事にさっきまでのおどけた態度が止まってしまった。