素敵な夜はあなたと・・・
「何かあったのか?」
「何も、どうして?」
「お前、なんか少し変わったか?」
斎藤の言葉に茜は優也の顔を思い出していた。何故、こんな時まで優也を思い出してしまうのか、そんな自分の心が許せなかった。
「なあ、茜。」
「・・・ごめん、ちょっと疲れた。帰ってくれる?」
茜の寂しげな表情を見て斎藤は帰りたくはなかったが、ここで茜の機嫌を損ねることも出来ずに茜の言う通り帰ることにした。
しかし、マンションを後にする斎藤の足は重く、茜の暗く悲しげな表情を思い出しては茜を一人には出来なかった。
斎藤は近くのコンビニへと走るとその店で、茜の様な女の子の好きそうで美味しそうに見えるスィーツとジュースを買って茜のマンションへと走った。
茜は悲しげな表情より明るくてにこやかな笑顔の茜の方が似合うのだと斎藤は必死になってマンションまで走った。
「ピンポーン」と再び玄関のベルの音が聞こえると、嫌々そうな声で茜がインターフォンに出た。斎藤はまだ茜の機嫌が悪いのだと思うと、喋る声に力が入らずオドオドとしてしまった。
「茜に渡したいものがあるんだ。開けてくれないか?」
斎藤の声だと分かると茜は渋々ながらもドアを開けた。すると、斎藤はコンビニで買って来たスィーツとジュースを袋ごと差し出した。